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ペルソナのパワー(1.ペルソナとは何か?)
■フォレスターリサーチにおけるペルソナの定義
企業が何か新しい製品やウェブサイト、サービス、キャンペーンなどを企画するとき、様々な意見がぶつかり、長いミーティングが何度も続くことがよくあります。
「こういう機能があったほうがいいと思う。」
「キャンペーンのレターはより短くてシンプルにしたほうがいいのではないか?」
「いや違う。長くして詳細を説明したほうがいいと思う。」
「Webサイトのトップページにうちの部門の情報を大きくアピールしたいんだけど。。。」
などなど、とにかく方向性のない、まとまらないディスカッションがあることが多々見られます。もし、そのウェブサイトや製品が一人のための製品であったら、そして各デザイナーやステークホルダーがその人の好みや嫌いなもの、属性、モチベーションなどすべて分かっているのであれば、このような議論はあり得ません。今の時代、一人のためにデザインをする企業はないと思いますが、主要なお客様を表すモデルのためにデザインをする企業は増えてきました。
そのモデルが、1999年にアラン・クーパーが定義したペルソナです。フォレスター・リサーチでは、ペルソナを次のように定義しました。
ペルソナとは、
・最も大事なお客様の属性、行動、ゴールを表すモデル
・実在の人間の行動を観察して人物像を引き出している
・一つのカスタマー・セグメントを代表する人についてのストーリー(目で見られるような描写)
・製品、チャネル、メッセージのデザインのために活用
■ペルソナの例:NASAの子供向けのサイト作成のために作られたペルソナ
さて、まずペルソナがどういうものであるかを理解していただくために、ここで一人のペルソナを紹介します。カール・ウォルツ君という6歳のかわいい坊やです。
カール君はとても宇宙に興味をもっていて、例えばお父さんが、NASAのインターナショナル・スペース・ステーション(ISS)をIISと読んだら、「IISじゃなくてISSだよ」と訂正するくらいです。カール君のこの1ページのスライドの説明を見ると、彼の主要な属性やゴールなどが一目で分かりますし、真ん中にあるストーリを読めば、カール君と親しくなったと感じることができるでしょう。そして、これを何度も見ているうちに、いつかカール君に会ったことがあると思えるくらい、共感できるようになります。
しかし、ここで残念なニュースをお伝えしなければなりません。カール君は実は存在していません。この顔写真はどこかのフォト・ライブラリーからコピーした写真であり、さっきのストーリーも一人の坊やのストーリではなく、5、6人の6歳の子供のインタビューで得た情報を結合したものなのです。このカール君というペルソナは、米国のインターラクティブ・エージェンシー Critical Mass社がNASAからの依頼を受け、カール君の年代のためのウェブサイトを製作するために作りました。NASAのミッションのひとつは子供の教育であり、6歳の子供がどのようなものに興味を持つかを知り、それに基づいてサイトを作りたかったのです。
できあがったサイトはこれです。
ご覧のとおり、カール君が好みそうな赤や青の原色を使ったり、小さな手でもマウスを操作しやすいように「Moon」などのような大きなボタンを作っています。また、実際にこのサイトにアクセスすると、本物の宇宙飛行士チャーリー・カマルダが出てきて挨拶をします。とてもかっこいいイメージを与えます。
真ん中のほうに、6歳の子供にとっては少しレベルの高い文章が入っています。そこには、“In the coming years, NASA will explore the Moon, sending robotic missions by the end of this decade” と書かれてあります。 しかし、このような難しい言葉が入っているのは、間違いではありません。実は、カール君のプロフィールには「サイトはお父さんと一緒に見る」と書いてあるため、お父さんと二人で宇宙について学ぶことを前提にデザインされているのです。親子のコミュニケーションも計算されたデザインになっています。
このように、ページのすべての機能やデザインが、カール君を喜ばせるため、そしてカール君が欲しがるような情報を与えるためにできています。そして、カール君というペルソナのためにデザインされたウェブサイトは、カール君と同じくらいの米国の子供たちを喜ばせたわけです。