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ペルソナで知る海外マーケット--中国人のペルソナ--(1.なぜ中国人のペルソナを作ることになったのか(1))
■異文化理解のためのペルソナの可能性
みなさんもご存知でしょうが、「日本規格」を持ち込んだ海外進出が成功する例はあまり多くはありません。消費者も労働者も日本とは違うのです。「日本規格」の中には文書化された規格もありますが、日本における「常識」や「習慣」と海外のそれとの違いがあります。そして実は、文書化されない常識や習慣の違いが、思いがけないところで海外進出の障害になるものなのです。
常識や習慣は文書化されていないといっても、情報がまったく得られないというわけではありません。公開されている統計データから推量することもできますし、その国について書かれた本を読んだり、ほかの人の体験談を聞いたりするのも役に立ちます。ただ、常識や習慣のやっかいなところは、数字や体験談だけでは実感ができないところにあります。頭だけでは理解できないと言い換えてもよいかもしれません。実際、私もそうでした。中国に行く前に、中国のことを少しは知っているはずと思っていました。中華料理も好きですし、中国茶には非常に多くの種類があることも分かっています。中国史だって歴史の授業で黄河文明から近代くらいまではカバーしているはずです。そして、テレビや新聞、雑誌などから現代中国の知識も得ています。しかし、中国に行ってわかったのは、せっかく持っている知識の「つなげ方」が悪かったということでした。「知っているはずなのに、違っていた」の連続だったうえに、知っていることから間違った推測をしていたものもあったのです。
常識や習慣は、その国の人が仕事場であれ家庭であれ、生活の場で実際に行っている様子を見るのが一番わかりやすいのです。文字で読んでも平板な知識となるだけで、実は理解していないことが少なくありません。同じ情報でも、立体化されて生き生きと動いていれば誰にでも理解しやすく、しかも印象的なので記憶に残りやすいはずなのです。
そして、ビジネスのために相手国の常識や習慣を知る必要にせまられるようなときには、自分ひとりが知るだけでなく、ほかの社員あるいはビジネスパートナーも同じレベルの知識を持つことも求められます。
このような問題を解決する方法――文書になりにくい、しかも分かりづらい異国の常識や習慣を正しく捉えて理解する手法、加えて情報共有をするための手法――として、私はペルソナを使ってみることにしました。ペルソナを作って動かしてみることで、常識や習慣が行動として見えてくるはずですし、ペルソナを検討することで、情報の共有が図れるはずだと考えたからです。そして、これは異文化を理解するためにペルソナがどれくらい役に立つかを実証する実験にもなるはずです。
といっても単に中国の常識や習慣を知るためだけのペルソナではありません。そこはビジネスがらみですから、私たちが作るペルソナは、ビジネスのターゲット層を体現するものであり、しかもターゲット層の常識、習慣に対する理解を深めるものにする、という目標を設定しました。
ここからは、ペルソナの元となったデータ収集のお話です。といえば聞こえはいいですが、私の「びっくり!中国体験記」とでもいいましょうか、異文化体験に少しお付き合いください。これが、後にペルソナに生きてきます。
■「謝謝」は「ありがとう」ではなかった
中国で戸惑ったとこのひとつに、謝謝と言い過ぎてケゲンな顔をされたことがあります。日本では「あいさつ」を重要視しています。そこで、何かしてもらうと「ありがとう」をいうことが常識です。たとえば、食事をご馳走になれば、「ありがとう」をいうことが当然です。日本では、…。そこで、しばらくの間、中国でも「謝謝」を連発していたら、ケゲンな顔をされてしまいました。
かなり親しくなった中国人から言われて、その理由がわかったのは、1年後くらいでした。「あなたの『謝謝』は軽すぎる。」「『謝謝』と言わなくてもよいから、あなたが受けた以上のことを返すことが重要ですよ。」といわれたのです。日本語で言えば「不言実行」なのです。思い返せば、中国人が「謝謝」と言うシーンを見たことがほとんどなかったのです。
「謝謝」は「ここ一番」のときにだけ言えばよい、逆に相手が「謝謝」といってくれなくても、感謝していないわけではない、すなわち「謝謝」=「ありがとう」ではない、ということが1年たってはじめて分かったのです。
これと類似しているかなと思えることに、お土産や謝礼を受け取ってもらえなくて困ったことがあげられます。いつも親切にしてもった御礼にとお土産を買って持っていったら、「不用」といわれて受け取ってもらえないことが多発しました。同じように謝礼も受け取ってもらえませんでした。中国人の友人に聞いたところ、「不用」といわれても、引っ込めてはいけない。「不用」は「遠慮」なのだそうです。中国人の「遠慮」は徹底しています。10回程度断ることは当たり前。引っ込めるとこれも「小気」(ケチ)になってしまうそうです。ですから、受け取ってもらえない場合には、10回以上言うことは覚悟し、それでもだめな場合はおいてくることが必要なのです。それで初めて認めてもらえるのです。
中国語を勉強しても、なかなかわからない言葉の真の意味。外国人のペルソナを作るには、こんな小さなことを少しずつ積み重ねていく努力も必要です。
次回もさらに、「びっくり」のお話を続けたいと思います。
【テーマ】 04海外での活用