TOPペルソナスクエア佐々木康浩(株式会社三菱総合研究所) ペルソナの活用に向けて(1.本格活用期に入ったペルソナ手法)

  • 佐々木康浩(株式会社三菱総合研究所)
  • 株式会社三菱総合研究所 コンサルティング事業本部 主席研究員
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ペルソナの活用に向けて(1.本格活用期に入ったペルソナ手法)

佐々木康浩(株式会社三菱総合研究所)
2008年04月08日

手元に2つの雑誌があります。日経ビジネスと日経エレクトロニクスです。たまたま、同じ発売日の1月28日号に、ペルソナに関する記事が出ていました。
日経ビジネスの特集は「株式会社自民党」。自民党内で無党派層を研究する極秘プロジェクトがあって、その無党派層家庭「橋川家」というのがまさにペルソナなのです。
日経エレクトロニクスでは、技術中心からユーザーエクスペリエンスへ という記事で、ソニーが初めてテレビ購買者の実地調査を詳細に行った例や松下電器産業が「Living in High Definition」調査を米国で始めた例などが紹介されていました。ペルソナと大上段に構えずとも、日本企業でもペルソナの活用が緩やかに浸透し始めたことを端的に感じさせる記事群でした。

なぜ今、ペルソナ手法に注目が集まり始めたのでしょうか。
理由の一つはインターネットの進展による社会環境の変化だと思います。「平成18年通信利用動向調査」によれば、国民の68.5%がインターネットの利用者だということです。つまり、多くの人々が会社や学校でも自宅でも、通勤・通学途上でも、常時ネットにつながっていることになります。このことが新しいビジネス提供やビジネスモデル創成にもつながり、グローバル化が一段と加速しています。
従来と比べて7倍の速度で社会環境が変化していることを称してドッグイヤーと言われるようになりましたが、サブプライム問題の世界的な広がりを見ると、もはや20倍のマウスイヤーといった様相を呈していると言えるかもしれません。

二番目の理由は、十人十色から一人十色と言われるような消費者自身の変化ではないでしょうか。
先進国では生活に必要な物資は一通り行き渡り、買う物も買う場所も多種多様な中から選べるようになりました。そして、その選択基準も、年代別に一律というわけでなく、成熟化・多様化しています。四畳半一間に住みながらポルシェに乗っている人もいるくらいです。
このような状況では、ヒットする商品やサービスが、ますます予測しにくくなってきました。ある意味、大ヒットというのはもはや存在しないのではないかと思われるほどです。従来型のマスマーケティング手法が通用しなくなってきたのです。

もう一つ別の観点から、ペルソナの必要性を示しましょう。
東京大学の藤本隆宏教授の「もの造り哲学」論によれば、企業が日々生み出す商品は「製品設計情報が素材、すなわち媒体(メディア)のなかに埋め込まれたもの」と見なすことができます。つまり、自動車とは鉄板やガラスという媒体(素材)の上に製品設計情報が載ったものという訳です。
このように考えると、製品開発は”情報”の創造であり、生産は”情報”の転写、販売は”情報”の対顧客発信、そして消費は”情報”の解釈と考えることができます。これは、自動車や電器製品に限りません。飲食店や官公庁などのサービス業を含めた全ての産業に適用可能な考え方です。すなわち、世の中の全ての産業は広義の情報産業と見ることができることになります。


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もう少し詳細に見てみましょう。
企業の中で、製品が出来るまでに、製品設計情報が複数の部署をバケツリレーのように転送(受け渡し)されていきます。この”転送”のときに、思い込みや誤解といった「誤差」が発生するのです。製品設計情報の劣化が起こり、当初の想いや斬新なアイデアは、少しずつ違った形で生産や販売部門に渡されていくことになってしまいます。



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ここにペルソナがあれば、転送の際の思い込みや誤解を最小化させることが出来る可能性があります。さらに、会議の効率化や情報共有の的確化にもつながる期待があるのです。

以上が、我が国でもペルソナが必要となり受け入れられ始めた主な理由であると私は考えています。

※参考文献:藤本 隆宏「能力構築競争−日本の自動車産業はなぜ強いのか 」中公新書

【テーマ】  01ペルソナの基礎

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