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ペルソナで知る海外マーケット--中国人のペルソナ--(2.なぜ中国人のペルソナを作ることになったのか(2))
前回(「なぜ中国人のペルソナを作ることになったのか(1)」)に引き続き、中国人ペルソナを作る発端ともなった中国での体験をもう少しお話します。最初に皆さんに問題です。中国の一般庶民の乗り物は何だと思いますか?
■中国で自転車は走っていない。
「中国の乗り物といえば?」と質問されたら、皆さんはどう答えますか。マーケティングのプロを自認している私の友人は、確信をもって「自転車」と答えました。皆さんの中にも、天安門広場を走り抜ける自転車の大群を思い浮かべつつ、同じ答えを出した人もいらっしゃることでしょう。しかし、これはハズレです。
中国で自転車が皆無であるというわけではありませんが、私が訪れたことのある北京、上海、深セン、大連では自転車はほとんど見かけず、紛れもない自動車社会でした。それも人間よりも自動車が優先されていると感じられるような状況です。この中で自転車に乗っていたら、かえって不便、しかも怖いだろうとさえ思いました。
中国の都市部の一般道路には2つの特徴があります。
1.片側3車線以上
2.横断歩道は少ない
そして、ドライバーは信号を守りますが、割り込みは当たり前、速度規制は気にしていないようでもあります。このような中、歩行者はどのように道路を渡ると思いますか? 時速100kmで疾走する自動車の間隙を縫って、車線間に引かれたそれぞれの白線で立ち止まりながら、「阿吽の呼吸」で1車線ずつ渡っていくのです。まさに驚嘆すべきテクニックです。
■中国人から見たアメリカ
車社会、広い道幅、高層ビル群、広いブロック。中国の街並は看板のほとんどが漢字ということを除けば、アメリカの都市とまったく変わりません。
そして、よく見かける横文字の看板は、「KFC」、「McDonald's」、「Pizza Hut」、「Starbucks」。これらの店の値段は中国人の平均所得から推測する限り、高くて手が出るはずのないレベルです。しかし、現実には、それぞれの店舗に客足が途絶えることはありません。平均所得と価格という数値データからだけではわからない何かがあるはずなのです。
そこで、わざわざ高価な店に入る理由を中国人に尋ねてみました。答えは、アメリカは憧れの国であり、その一端に触れることが一種のステータスであるということでした。「McDonald's」に人が群がっているのは、決して、ハンバーガーが流行しているわけではなく、「McDonald's」そのものが重要なのです。
■中国と日本の類似点
中国の行事で私がもっとも驚いたのは、「クリスマス」です。12月が近づけば中国のいたるところでクリスマスツリーが飾られ、クリスマスセールになります。共産国である中国では宗教が盛んではありません。しかも、仏教や儒教ではなく、キリスト教が広まっているとは考えにくいですし、聞いたこともありません。私が知り合った中国人の中にも、キリスト教徒はいませんでした。
では、中国ではクリスマスをどのように捉えているのか。これもまた、中国人にインタビューしてみました。その結果わかったのは、ほとんどの中国人は日本と同様に無宗教であり、クリスマスは一種のお祭りと考えているということです。ここの部分はまるで日本とそっくりです。
同様の行事として、バレンタインデーも盛んです。日本との違いは、中国のバレンタインデーは、女性から男性へだけという制限はなく、男性から女性への方が圧倒的に多いことくらいでしょう。
欧米からやってきた行事だけでなく、中国の伝統の行事も盛んです。「春節(旧正月)」、「清明節(日本のお盆)」、「端午節(陰暦5月5日:端午の節句)」、「七姐節(陰暦7月7日:七夕)」「中秋節(陰暦:8月15日)」、「重陽節(陰暦9月9日:菊の節句)」などもお祝いをします。「七姐節」、つまり、「七夕」は若いカップルにとって、バレンタインデーと同じように重要な日でもあります。このような「欧米文化好き」、「宗教とは関わらないお祭り好き」、「伝統行事好き」などの特徴は、私たち日本人とほとんど同じだと言えるでしょう。
それだけではなく、経済の発展状況や発展プロセスなどは、30年前の日本のような気がしてなりません。たとえば、地方からの労働力の流入は、日本の高度成長期の「金の卵」と呼ばれた地方からの若年労働者の流入を彷彿とさせます。あの頃の日本と違うことは、現在の中国は高層ビルディングが林立し、車社会になっており、貧富の格差が想像をこえていることです。
■生簀で気づいたペルソナの必要性
このへんで、そもそも私が中国に行くようになったきっかけ、そしてペルソナを作ることに思い至った経緯についてお話しましょう。
私が中国に行った目的は物流関連ソフトウェアのビジネスでした。このビジネスについてのプランは、中国に行く前に、自分たち(私とビジネスパートナーたち)の中国に関する知識に基づいて、事前にまとめていました。ところが、最初の訪中で、そもそも中国についての理解が浅かったことに打ちのめされました。私は中国というと自転車の大群が疾走している様子を思い浮かべた一人でした。クリスマスやバレンタインデーが盛んだなんて思ってもみませんでしたし、中国人がアメリカに憧れをもっているとは想像もできませんでした。中国の消費者の習慣やその裏にある気持ち、考え方をつかんでいなかったわけです。そして、物流は消費者の考え方に影響されるのです。
「魚」の物流を考えてみてください。日本では、魚は冷蔵あるいは冷凍して運びます。日本人なら誰でも、魚を運ぶには冷蔵車または冷凍車が必要だと考えるはずです。
では、中国では?
広大な中国で魚を運ぶために日本以上に冷凍車が求められるはず。したがって「冷凍車はビジネスになる!」はずです。ところが、中国に行き、スーパーマーケットの魚売り場を見て仰天しました。もちろん、「死んでいる魚」もいます。しかし、パックに入っている魚はあまり見受けられません。そして、高級であればあるほど、魚は生簀で泳いでおり、魚を買いたいお客は自ら、または、店員に頼んで生簀からすくい網で魚を取り出すのです。これが中国の習慣、中国人にとっての常識です。しかも、中国人に聞いたところ、「生きていることが新鮮の証明であり、生きている魚は死んでいる魚の10倍(多少オーバーな表現かも知れませんが)の値段がする」そうです。これでは、冷凍車両よりも活魚運搬車両が求められ、システムに必要な装置も変わり、作業プロセスも違ってくるのです。
もちろん、現地に行ってから生簀に気づいたというのは、準備不足であったことは否めません。しかし、たとえ十分なデータを収集したとしても、従来の手法だけでは、顧客の本当の習慣や感情を把握できないのではないかとも感じました。そこでペルソナを作ってみようと思い立ったのです。ペルソナならばデータを顧客の姿として捉えるので、顧客の生活習慣をより深く理解できるはずだと考えたからです。
【テーマ】 04海外での活用