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  • 白根英昭(株式会社大伸社)
  • 株式会社大伸社 取締役m.c.t.事業部長

ペルソナをつくる(4.調査対象者を選定する)

白根英昭(株式会社大伸社)
2008年07月18日

今回は調査対象者の選定です。作業としてはおおよそ6つに分けることができます。

1.調査対象者の基準を決める
2.調査対象者の人数を決める
3.リクルーティングの方法を決める
4.スクリーナーをつくる
5.コンタクトをとる
6.対象者を確定する

実際に調査対象者を選定するときは、1〜3はプロジェクトの設計のステップで、4〜6はフィールドワークの設計のステップとの整合性を図りながら進めることになります。
では、順を追ってポイントを説明していきましょう。

■平均的なユーザー VS 極端なユーザー

まず調査対象者の基準を決めます。年齢、性別、職業といったデモグラフィック属性、対象となる製品・サービスの認知状況や利用状況といった経験に関する情報、そして価値観やライフスタイルといった情報から、対象者に求められる条件を明確にしていきます。
対象者の基準を決めるときのポイントは、平均的なユーザーだけではなく、極端なユーザーを取り込むことです。製品やサービスの一般的な使い方を理解し、顕在化している問題を改善するには平均的なユーザーが有効ですが、製品やサービスを革新するための洞察を得るには、極端なユーザーを理解するほうが効果的だからです。
『ブルーオーシャン戦略』を読まれた方はご存知だと思いますが、この本で著者が提唱しているブルーオーシャン戦略は「非顧客」に注目します。これまでの戦略が「既存顧客の中の違い」を重視してきたのに対して、「非顧客が持っている共通点」にフォーカスを当てることでブルーオーシャン(競争のない新しい市場)を見つけよう、というのがその考え方です。フィールド調査のための対象者の基準もこれと同じです。既存顧客を平均的なユーザー、非顧客を極端なユーザーと置き換えてみれば、極端なユーザーを対象にする狙いがよくわかるのではないでしょうか。
調査対象者の決め方の具定例としては、テーマとの関連が深い軸を選んで、いくつかのグループをつくります。例えば「髭剃り」がテーマであれば、電気シェーバーを使う-使わない、美容にお金をかける-かけない、といった軸で4つのグループができるかもしれません。
できたグループに対して(あるいはいくつかの重要なグループに絞って)、「グループAから2名抽出する」「グループBから3名抽出する」といった具合に人数を割り振ります。
それと並行して、製品・サービスの経験に関連して洞察が得られそうな「極端さ」を示す具体的な条件を出していきます。「髭剃り」であれば「女性向けの製品を使っているユーザーを3名抽出する」「1回の髭剃りに30分以上かけているユーザーを最低2名抽出する」といった感じです。
このように検討した結果を「グループA、グループB・・・」×「具体的な条件1、具体的な条件2・・・」といったマトリックスで整理します。具体的な条件1を満たすグループAのユーザー、具体的な条件1、2を満たすグループBのユーザー、というかたちで候補者を抽出し、目標とする人数をヌケモレなく確保するようプロセスを管理していきます。

■人数の目安は1グループ7名〜10名

次に対象者の人数を決定します。ローカルな話で恐縮ですが、対象者の人数について考えるとき、南紀白浜の『熊野水軍埋蔵金探し』を思い出してしまいます。砂浜に埋めた宝物を掘り当てる夏のイベントなのですが、毎年、イベント開始直後は宝物がどんどん出てきて、10分後にはだんだん減ってきて、1時間後にはいくら掘ってもなかなか見つからなくなってしまう、というパターンになります。ごく稀に前の年の宝物がでてきて盛り上がったりもするのですが、2時間も経つと開始当初のような覇気もなく、参加者は暑さに耐えながら惰性で掘っています。あるタイミングを過ぎると発見の数が激減していき、無力感が忍び寄ってくるという状況がフィールド調査とそっくりだな、と思ってしまうわけです。
学術的なエスノグラフィーの世界では、「もうこれ以上新しい発見はなさそう」といった飽和感を感じたらやめる、という『熊野水軍埋蔵金探し』的な進め方も一般的らしいのですが、ビジネスの世界で「対象者の人数=これ以上やっても意味がないなと感じるまで」という考え方は馴染みません。実際のプロジェクトでは予算をベースに人数が決まるケースが多いとはいえ、理想としては対象者の人数は何名が適切なのでしょうか。ここではエキスパートの方々の見解をいくつか紹介しましょう。
まずZMET法。実証実験を経て体系化されたメタファーを使ってユーザーの潜在意識を調べる手法ですが、この手法の場合は10名を推奨しています。『心脳マーケティング』のP180、P354に関連する記述があります。1969年に設立され、豊富なデザインリサーチの実績を持つエルゴノミデザインは経験則から8名を基本にしています。社内では「8-80ルール(8人で80%の洞察を得る)」という言葉を使っているそうです。調査の性格は異なりますがヤコブ・ニールセンはユーザビリティーテストに必要な人数を5名としています。
ちなみにわたしたちの場合は1セグメントにつき7〜10名をおすすめしています。それ以上増やしてもあまり生産的ではありません。経験としては8名を超えるあたりから新しい発見の数も著しく減ってきて「もうこれ以上何も発見できそうにないな」という感覚になってきます。

■外部のリクルート会社を使うか、自分たちで探すか

対象者の基準・人数が決まったら、具体的に候補者を抽出していきます。方法としては、外部のリクルーティング会社を活用する方法と、自分たちで探す方法があります。
外部のリクルーティング会社を活用する場合は、百万人以上のモニターから多様な対象者を効率よく抽出することができます。最大のメリットはリクルーティングにかける自分たちの負荷を低減できるということでしょう。この方法の限界は、テーマが特殊な場合や対象者の条件のハードルが高い場合は出現率が下がってしまって、必要な母数が確保できなくなる点です。このような場合は必然的に自分たちで探す方法を選びます。
自分たちで探す方法には、自分たちのネットワークを使う、webその他のメディアから候補者を探して直接コンタクトをとる、独自に募集広告を出してコンタクトを待つ、といったバリエーションがあります。
自分たちで探す方法は、いわゆる一本釣りが可能ですから、対象者として最高の候補者をゲットできるのが最大のメリットです。その気になれば、例えば「全国でベスト4に残る高校の球技チームで他のメンバーにもっとも影響力のある選手」とコンタクトをとることもできます。「極端な先端ユーザー」を対象にするリードユーザーリサーチではこの方法が適しているでしょう。
一方、自分たちのネットワークを使う場合は、安易に友人や同僚で揃えてしまうなど、同質の対象者に偏ったりしないように気をつけなければいけません。

■対象者は予備を確保しておく

具体的にコンタクトをとる前に、調査対象者の基準を満たしているかどうかを判定するための質問をまとめたスクリーナーを用意します。実際にコンタクトをとる際には、基準を満たしているかどうかに加えて、コミュニケーション能力はどうか、調査に対して協力的かどうか、調査擦れしていないか、といったポイントをチェックします。条件を満たしていれば候補者リストに加え、個別に日時を調整しながら、スケジュールの枠におさまるように対象者を確定していきます。
その際に想定しておいたほうがいいのが、スケジュール確定後の変更や当日のドタキャンです。そういった状況に備え、対象者を確定する段階で予備のユーザーを確保しておきます。対象人数の2割程度のユーザーにスタンバイしてもらうようにすれば、何かあった場合もフレキシブルに対応できるので安心です。

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