TOPペルソナスクエア小澤仁護(株式会社CSKシステムズ西日本) ペルソナ活用事例 ゼロからの実践〜社内コミュニケーションの活性化〜(4.ペルソナをどのように作ったのか(ペルソナ完成〜評価まで))

  • 小澤仁護(株式会社CSKシステムズ西日本)
  • 株式会社CSKシステムズ西日本 事業企画部 立命館大学法学部卒。 1997年 株式会社CSK入社。 (2007年7月株式会社CSKシステムズ西日本に分社化) システム構築、米国駐在 先進技術動向調査、情報化計画策定コンサルティング、事業企画推進等に従事

ペルソナ活用事例 ゼロからの実践〜社内コミュニケーションの活性化〜(4.ペルソナをどのように作ったのか(ペルソナ完成〜評価まで))

小澤仁護(株式会社CSKシステムズ西日本)
2008年08月14日

■スケルトンをペルソナ文書へ展開する

 ペルソナの骨組みであるスケルトンの作成までを前回のコラムにて説明ましたが、今回は最後の工程として、ペルソナの完成までをお伝えしていこうと思います。スケルトンには、パーソナリティ(性格、興味、得意なこと、苦手なことなど)、ゴール(短期・長期)、仕事上の役割、業務環境、社内情報を見る頻度・時間帯、困っていること、喜びを感じることなどの項目についてそれぞれの箇条書きで記載しておきました。今度は、これらを元にしてペルソナ文書のかたちに肉付けしていきます。あらかじめペルソナ文書の雛形を考慮したうえでスケルトンを作っておいたので、基本的には項目にあわせて文章化していく作業です。いわば骨格にあわせて肉をつけていって、人物を作りあげるといったところです。


■最終段階で試行錯誤を続ける

ただ、この肉付け作業を行うにあたっていくつか迷った点もありました。まず、スケルトンに箇条書きした内容のどれをどの程度ペルソナに反映させるべきかという問題です。全てを載せたとしてもそれは単なる項目と情報の羅列になってしまい、ペルソナを人物像として表現するには適切ではないように感じてしまうのです。そこで、当ペルソナの利用目的に即して考えてみることにしました。つまり社内ポータルでの情報共有のためのコンテンツ検討という目的から、何のために社内の情報共有が必要で、どこに不満があって、その理由は何か、ということが明らかになるものを優先的に選んでいくことにしました。例えば、
・目的=「社内手続きのための情報を探すとき」
・不満=「すぐに見つからないとイライラする」
・理由=「空いた時間を見つけて使う」「あまり時間をかけたくない」
「周りのメンバーの手を煩わすのは悪いと感じる」
といった発言を選んでいって、どんな時にどうして不満に思うのか、ペルソナの気持ちが理解できるかたちにしていきます。さらに、ペルソナを使うときに記憶に残りやすいように、具体的で印象的な発言を優先的に選んでいくようにしました。
次に、何体のペルソナを作るべきか、ということにも悩みました。結論的には当コラムの第2回目で紹介した“曽根原淳哉さん”というペルソナ1体にしたのですが、当初は2体のペルソナを作ることも考えていました。それは、当社の600人強の社員のうち、20代後半と40代前半の社員が多く、この2つの層が山になっています。そのため、2つの世代間には違いがあるのではと考えていたため、2体くらいのペルソナに分かれるのが適切かと思っていました。しかし、社内の情報共有に関するアンケートとインタビューの結果からは、むしろ2つの世代間でも共通点が多く、大きな違いはなかったことから、2つに分けてしまうのはむしろ正しくないだろうと判断しました。つまり、2つの世代の違いがあるのではという“主観”や“思い込み”ではなく、データに基づいた“事実”を重視することにしました。逆に2つの世代間で明らかな違いがあった場合には2体にすべきだと思うのですが、今回に関しては世代間での事情や利用環境が明らかに異なるといったことはなかったため、最終的に1体のペルソナに落ち着きました。
他にも、ペルソナ文書の表現文体について試行錯誤も行いました。例えば、全て話し言葉でペルソナ自身が話しているようなスタイルで作ってみました。しかし、全てこの形式だとペルソナがものすごくおしゃべりな感じがして、設定していた穏やかな人柄というよりも、むしろ要求が多くて非常にうるさい人物のようになってしまいました。さらに、これを読んでも、結局いろいろ言っているなあ、という印象だけが残ってしまって中身が頭に残らないものになってしまうように感じました。一方、第三者的に客観的に表現するパターン、つまり「○○さんはコレコレを担当していて、こういうときにイライラしています。」という形式でも記述してみました。結果的には、こちらの方が全体として読みやすく頭にスッと入ってきました。また、ペルソナ雛形のフォーマットにあわせて記載していることもあり、使う際にもポイントをサッと読みやすいというメリットもあり、客観的に表現するかたちを採用しました。
このように、ペルソナを最終的に完成させる過程においては、いくつか悩んだ点もあり、まさに生みの苦しみといったところでした。

■ペルソナの完成へ至る

いくつかの試行錯誤を経つつも、ペルソナの人格を作り上げるために顔と名前をつけることに際しては、結構楽しく進めることができます。顔は、インタビューした方々のイメージやこのペルソナ文書の内容から、いかにも社内にいそうな感じの写真を素材集から探し出しました。顔写真選びは、私一人だけではなく周りのメンバー3、4人と一緒にワイワイと楽しみながら見ていって、皆がイメージ通りだと納得できる人物を選びました。実際の社員の写真を使うということも考えられなくもなかったのですが、知っている人の場合、その人に属するイメージがついてしまい、ペルソナと離れてしまいかねないので、それはやめました。
ペルソナの名前については、印象に残りやすいように珍しい名前を苗字辞典と名付け辞典から見つけて、社員にはいない名前になるように配慮していきました。さらには、ペルソナ自身の気持ちを象徴するような発言を実際のインタビューから選んで、顔写真の横に載せました。そして、ここはあえて手書き風のフォントを使って、ペルソナ本人が書いたような演出もしてみました。
年齢についてはデータ的に社員割合の多い年齢層である20代後半を、勤務場所についてはお客様先という社員の半数を占める仕事場で、という設定にしました。また、ペルソナ文書の中身に「イライラする」とか「まわりのメンバーに悪い」といったペルソナが嫌いなことなどの心理面も含め、社内コミュニケーションに関するエピソード的なストーリーも記載しました。最終的にペルソナ文書は全体で約1800文字と、3〜4分程度で読める分量で仕上げました。これでようやく“曽根原淳哉さん”というペルソナが出来上がりました。


■出来上がったペルソナを評価する

これまでユーザー情報の収集から、アンケート、ターゲット特定、インタビュー、スケルトン作成、ペルソナ文書への肉付けという手順でペルソナを作り上げてきました。今度は、このペルソナが信憑性を持って受け入れられるかどうかを評価するということを行いました。つまり、ペルソナのお墨付けです。具体的には、社員をよく知る人事担当者や何人もの社員にペルソナ文書を読んでもらい、
・ペルソナ文書は読みやすく、矛盾点や意味不明なところがないかどうか
・ペルソナ自身の人柄や仕事ぶり、社内コミュニケーションに対する思いが伝わってくるかどうか
・このペルソナが当社の社員として、実在しそうに思えるかどうか
といったことを評価してもらいました。その結果、「たしかにこんな人、いるいる!」とか「うちの会社にこういう社員いるなー」といった意見。さらに、このペルソナの顔写真は実際には当社にはいない架空の顔なのですが、「あ、この人社内で見たことある!」と言ってくれる人までもいたほどでした。こうした反応をもらえたことで、このペルソナが当社の社員らしさを表わすことができていると考えることが出来ました。社内での評価とあわせて、『ペルソナ戦略』なども参考にしながら、ペルソナの確からしさや正当性を確認するチェックもあわせて実施していきました。

今回のコラムまでで、ペルソナ作成の手順についての説明は終わりになりますが、ペルソナは作ってからが大事です。つまり、ペルソナを使って、本来の目的である社内ポータルのコンテンツ検討に活用する段階です。次回は、このペルソナをどのように活用していったのかをお伝えしたいと思います。

【テーマ】  03ペルソナの事例

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